なぜ今、学生が動物保護ボランティアに参加すべきか その意義と得られる経験
はじめに
動物保護に貢献したいという気持ちを持ちながらも、「自分に何ができるのだろう」「ボランティアに参加することで何を得られるのだろう」と、一歩踏み出すことに迷いを感じている学生の方もいらっしゃるかもしれません。大学生活は学業やサークル、アルバイトなど、さまざまな活動に時間を費やす期間ですが、この時期に動物保護ボランティアに参加することは、動物たちへの貢献だけでなく、皆さん自身の成長にとっても非常に価値のある経験となります。
この記事では、なぜ今、学生の皆さんが動物保護ボランティアに参加することが有意義なのか、その活動が持つ意義と、参加を通じて得られる貴重な経験について詳しくご紹介します。ボランティア活動の種類や探し方を知るだけでなく、活動の先に広がる可能性についても理解を深めていただけたら幸いです。
なぜ今、学生が動物保護に関わるべきか
日本の動物保護を取り巻く状況は、少しずつ改善されているとはいえ、まだ多くの課題を抱えています。年間約2万頭の犬や猫が自治体の施設に引き取られ、その一部は殺処分されている現実があります(環境省「犬・猫の引取り及び殺処分等の状況」令和4年度)。また、飼育放棄や虐待といった問題も後を絶ちません。
こうした状況に対し、行政の取り組みだけでは限界があり、多くの動物保護団体が民間の力で動物たちの命を救い、新しい家族を見つけるための活動を行っています。しかし、これらの活動は常に人手不足や資金不足に直面しています。
活発な学生の皆さんが動物保護ボランティアに参加することは、こうした現場にとって非常に大きな力となります。若い世代の新しい視点やエネルギーは、活動に活気をもたらし、問題解決のための新たなアイデアを生み出す可能性も秘めています。そして何より、一匹でも多くの動物を救うことに直結するのです。学生という比較的自由に時間を使える時期だからこそ、社会の一員として動物保護という重要な社会課題に関わることは、大きな意義があると言えるでしょう。
動物保護ボランティア活動の意義
動物保護ボランティアに参加することは、単に動物のお世話をするだけにとどまりません。その活動は多岐にわたり、それぞれに深い意義があります。
- 命を救う直接的な支援: 保護施設での清掃や給餌、散歩などの活動は、保護されている動物たちの生活環境を改善し、健康を維持するために不可欠です。一見地味な作業に見えるかもしれませんが、動物たちが安心して過ごせるようにするための大切な貢献です。
- 新しい家族との縁を結ぶ: 譲渡会での運営補助や、保護動物の情報発信などは、動物たちが新しい飼い主さんと出会う機会を増やすことに繋がります。一組の新しい家族が生まれる瞬間に関わることは、活動の大きなやりがいの一つです。
- 社会への啓発と意識向上: 動物保護の現状や問題について多くの人に知ってもらうためのイベント企画・運営、SNSでの情報発信なども重要な活動です。より多くの人が動物保護に関心を持つことで、社会全体の動物福祉への意識を高めることができます。
- 問題解決への貢献: 地域猫活動におけるTNR(Trap/Neuter/Return:捕獲・不妊去勢手術・元に戻す)の補助や、多頭飼育崩壊の現場でのレスキューサポートなど、問題の根本的な解決に向けた活動に関わる機会もあります。
このように、学生の皆さんの多様な関わり方が、動物たちの命を救い、動物を取り巻く社会をより良く変えていくための確かな力となります。
活動を通じて学生が得られる貴重な経験
動物保護ボランティアへの参加は、社会貢献だけでなく、皆さん自身の大学生活や将来に活きる貴重な経験やスキルをもたらします。
- 動物との向き合い方、命の尊厳を学ぶ: 保護動物の中には、人間に不信感を抱いていたり、心に傷を負っていたりする子もいます。そうした動物たちと根気強く向き合い、信頼関係を築く過程で、命の尊厳や、言葉を持たない存在とのコミュニケーションの難しさ、そして喜びを深く学ぶことができます。
- 多様な人々との交流を通じたコミュニケーション能力の向上: ボランティア活動には、様々な年代や背景を持つ人々が参加しています。保護団体のスタッフ、他のボランティア、獣医師、トレーナー、譲渡希望者、地域の住民など、多くの人と協力し、意見を交わす中で、円滑なコミュニケーションの取り方や、相手の立場を理解する力が養われます。
- 課題解決力、臨機応変な対応力の習得: 予期せぬ事態が発生したり、計画通りに進まなかったりすることもボランティア活動では起こり得ます。限られたリソースの中で、どのように課題を乗り越え、最善の行動をとるかを考え実行することで、実践的な問題解決能力や、変化に柔軟に対応する力が身につきます。
- 責任感、主体性の醸成: 任された役割を最後まで遂行する責任感や、自ら進んで課題を見つけ、改善提案を行う主体性は、どのような分野に進むにしても不可欠な能力です。ボランティア活動では、こうした主体的な姿勢が求められ、実践を通じて自然と身についていきます。
- 社会課題への理解と関心の深化: 動物保護活動を通じて、動物問題だけでなく、貧困、高齢化、地域のコミュニティといった様々な社会課題が複雑に絡み合っていることを実感する機会があるかもしれません。現場での経験は、教科書だけでは得られない、生きた社会への理解を深めます。
- 視野の拡大、価値観の変化: 動物保護ボランティアは、これまで知らなかった社会の側面や、多様な価値観に触れる機会を提供します。活動を通じて自身の視野が広がり、物事の見方や考え方が良い方向に変化することも少なくありません。
- 将来の進路やキャリアへの示唆: 動物に関わる仕事はもちろん、福祉、教育、広報、イベント企画、事務、経営など、動物保護団体で行われている活動は多岐にわたります。様々な役割を担う人々と関わる中で、自身の興味や適性、将来の進路について考えるヒントが得られることもあります。
これらの経験は、大学の授業やサークル活動だけではなかなか得られない、貴重な実践知となります。就職活動などで自己PRする際にも、単なる知識ではなく、実際の行動を通じて得た学びや成長は、説得力のあるエピソードとなるでしょう。
参加しやすい時期・期間と得られる経験
学生生活の忙しさを考慮すると、参加できる時間や期間に限りがあるかもしれません。しかし、動物保護ボランティアは、様々な形態で参加することが可能です。
- 単発・短期イベント: 譲渡会やチャリティイベントなど、特定の日に開催されるイベントの運営補助は、一日や数日間のみの参加で大きな貢献ができます。準備や当日の運営サポートを通じて、イベント企画・運営のノウハウや、多くの人と協力する経験が得られます。
- 長期休暇中の集中参加: 夏休みや春休みを利用して、数週間程度、保護施設での活動に集中的に参加することも可能です。動物たちの日常的なケアに深く関わることで、より実践的な飼育スキルや、命と向き合う責任感を強く感じることができます。
- 学期中の継続参加: 週に数時間、決まった曜日に保護施設でのお手伝いや、オンラインでの広報活動など、無理のない範囲で継続的に参加することも歓迎されます。継続的な関わりを通じて、動物たちの変化を間近で見守る喜びや、団体の一員としての帰属意識、そして物事を継続する力が培われます。
- オンラインでの参加: SNSでの情報発信、啓発コンテンツの作成、ウェブサイトの更新、翻訳作業など、自宅や大学のスキマ時間を利用してできるオンラインボランティアもあります。PCスキルや文章作成能力、デザインスキルなどを活かし、情報発信や啓発といった側面から貢献できます。
このように、ご自身のライフスタイルに合わせて柔軟に参加できる形態があるため、「忙しいから無理だ」と諦める必要はありません。まずは無理のない範囲で関われる方法を探してみるのが良いでしょう。
不安の解消と一歩踏み出すために
「ボランティア未経験だけど大丈夫?」「一人で参加しても浮かないかな?」といった不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。多くの動物保護団体では、ボランティア初心者向けの研修やオリエンテーションを用意しており、活動内容やルールについて丁寧に教えてくれます。一人で参加する方も多く、共通の目的を持つ仲間と自然と交流が生まれる場でもあります。
まずは、気になる団体のウェブサイトを確認したり、説明会に参加したりして、活動内容や雰囲気について情報収集から始めてみましょう。不明な点があれば、問い合わせてみることも大切です。多くの団体は、学生の参加を心から歓迎しています。
活動にかかる費用としては、交通費や食費が主なものとなる場合が多いです。その他、軍手や作業着など、活動内容によって必要なものが指定されることもあります。事前に団体のウェブサイトで確認するか、問い合わせてみるのが確実です。無理のない範囲で続けられるか、費用面も考慮して検討しましょう。
まとめ
学生時代に動物保護ボランティアに参加することは、単に動物を助けるだけでなく、皆さん自身の人間的な成長に繋がる貴重な経験です。命の大切さを学び、多様な人々と協力し、社会課題に直接関わる経験は、今後の人生において必ず皆さんの力となるでしょう。
「なぜ今、自分が動物保護に関わるのか」という問いに向き合うことは、自身の価値観や興味を深める機会でもあります。この記事でご紹介したように、動物保護ボランティアには様々な意義と、学生の皆さんが得られる豊富な学びがあります。
もし少しでも関心をお持ちであれば、まずは情報収集から始めてみてください。あなたの「やってみたい」という気持ちが、保護を必要とする動物たちの未来を明るく照らす一歩となるはずです。